学振DCといえば、博士学生、博士課程進学を考える修士やB4にとって憧れのポジションですね。
採用されれば、年間100万円程度の研究費に加え、毎月20万円の給料を得ることができます!
どうすれば学振DCに採用されるのか知りたい!
そこで本記事では、学振DC1では不採用を経験し、DC2では面接免除で採用された筆者が、採用されるために最も重要なポイントを解説します!
結局、業績が大事
いきなり厳しい現実なのですが、最も重要な点は業績、もっと厳密に言えば「自分が筆頭著者である論文を出していること」です。
もちろん、良い申請書を書くことも重要なのは言うまでもありません。
しかし、学振の申請書は、常に忙しい大学教授が主に審査しているので、ほとんどの場合申請書はざっと流し読みする程度です。
また、審査員は一応あなたの研究分野に近い人が選ばれますが、あなたの研究分野の専門家であることはほとんどありません。
ここで、一度その審査員の教授になった気持ちで考えてみましょう。
詳しくない分野の研究提案書を流し読みしただけで、その研究の重要性や将来性が判断できるでしょうか…?
まあ、超人的に優秀でない限り無理ですよね。
そこで、結局は申請者の業績欄を見て判断することになります。
業績は、審査員の主観に依らない、最も客観的な判断基準と考えることができます。
例えば、DC1の申請書を出すのは修士2年の5月頃ですが、学部4年から研究を始めておよそ2年の間に論文を出しているなら、「この申請者は生産性が高い人なんだな」と判断されます。
また、これも審査員の気持ちになって考えてみると理解できるかもしれません。
「今年も申請書が何十本も届き、全てざっと読んだものの、どれも変わり映えしない。」
「でもこの中からいくつかは高得点を付け、いくつかは低得点を付けないといけない。」
「どうしようか…。 」
このように、申請書の内容では優劣をつけがたいと感じたら、業績が多い申請書に高得点を付けることになります。
なぜなら、「なぜこの人を高得点にしたの?」と聞かれた場合、「実際に研究成果を出してるから」と言えるからですね。
審査員が申請書の内容によほどのインパクトを感じない限り、選考基準は業績が中心になると思った方が良いでしょう。
学振DCに採用されるために必要な論文の本数
これは非常にシンプルで、DC1は1本、DC2は2本です。
これは別に、学振DC審査員の間の暗黙の了解、みたいなものではありません笑
DC1(DC2)で論文を1本(2本)出している申請者は、他の申請者よりも生産性が高く、特別研究員として採用すれば研究成果を挙げられるだろうと判断される、ということです。
言い換えると、DC1の申請書を提出するまでに論文を1本(DC2では2本)以上出している人の数は、採用される人の数と同じか、それよりも少ないということです。
なので、この論文の本数の基準は、研究の分野によって変化するかもしれません。
私が所属している化学系、生命系の分野では、ほぼ「 DC1は1本、DC2は2本 」という基準ですが、DC1提出時で論文1本出しているのは当たり前という分野、あるいはDC1までに論文出すのはほぼ不可能という分野では、事情が異なってきます。
同じ研究分野で、学振DCを取った先輩や、学振DCに申し込む同期がいれば、申請時に何本論文を持っていたか聞いてみましょう!
申請書提出までに論文を出すための過ごし方(申請まで2か月以上ある方向け)
学振DC1に申し込もうと考えている学士4年、修士1年の方、ぜひ申請書提出までに論文を1本出しましょう!
また、DC1は不採用になってしまったけれどDC2でリベンジしたい方、申請書提出までに論文を2本出しましょう!
私Jan(ジャン)は、そこそこデータは集まっていたものの、論文投稿までたどり着くことができず、結果DC1は不採用となってしまいました…。
しかし、DC2の申請までに何とか論文を2本出し、面接免除で採用を勝ち取ることができました!
これらの経験を踏まえ、学振DCの申請書提出までに論文を出すための過ごし方を紹介します!
論文を書くことを意識して実験を計画し、進める
皆さんは、実験してデータを集める目的が、研究室のミーティングで発表することになっていませんか?
私も論文を書き始めるまで意識していませんでしたが、論文執筆に必要となるデータは、研究室内ミーティングで求められるものとは全く異なります。
詳しくはまた別の記事に書きますが、 実験を計画し進めていく際に、以下の3点を意識することが非常に重要になります。
- 全ての実験結果は、最終的に一つのストーリー(流れ)にまとめることになる。
- 実験結果の再現性を示すため、同じ実験のデータが複数必要。
- 自分たちの主張と異なる可能性をすべて排除するための数多くの対照実験が必須。
これらの意識せずに実験を重ねていくと、「データはあるけど論文にまとめられない」という事態に陥ります。
学振DCへの申請を考えている方で、もし以上の点を意識していないと感じた方は、ぜひ今日から意識してみてください!
また、先に論文の書き方を把握しておくと、そこから逆算してどのような実験をすればいいかがつかめてきます。
論文の書き方は、以下の記事を参考にしてください!
あらかじめ指導教員に相談しておく
「自分はDC1(DC2)の申請書提出までに、どうしても論文を1本(2本)出したい」ということを指導教員になるべく早い段階で伝えておきましょう。
あなたがきちんと研究に励んでいれば、指導教員もできる限り協力してくれるはずです。
また、指導教員は論文を出すためにどのような実験をすればいいかをよく分かっています。
このため、あなたの目標が「研究室内ミーティング」や「卒論・修論」ではなく、「論文投稿」であることをはっきりと伝えることで、どのように研究を進めればよいか指導してくれるでしょう。
ただ、研究室によっては教員一人で10人近くの学士・修士を担当していることもあります。
このような場合、待っているだけではほとんど指導が受けられない恐れがあります。
しかし、あなたが「学振を取りたい!」という熱意を見せれば、アカデミックの道を選んだ指導教員は必ず呼応してくれるはずです。
受け身で指導を待つのではなく、積極的に指導教員とディスカッションしましょう!
どうしても教員がつかまらなければ、学振の申請や論文投稿の経験がある先輩に指導を仰ぐのも良いですね!
投稿する学術誌のインパクトファクターは無視!
学振DCの業績欄に書く投稿論文は、数がすべてです!
査読付きの雑誌であれば、どんなに無名の雑誌であっても構いません。
時間的に余裕がある場合を除けば、すぐに掲載されるインパクトファクターの低い雑誌に投稿しましょう。
中には、「もっと良いところを狙おうよ」とそそのかす指導教員もいるかと思いますが、全力で説得しましょう。
指導教員の欲より、あなたの学振の方が大切です。
もちろん、良い雑誌に載ったほうが有利ではあるのですが、無名雑誌の論文が1本(DC2は2本)あるだけでも、普通は学振DCの採用ラインを越えます。
おすすめは、日本の学会が刊行している英文誌です。
このような雑誌の特徴は、査読から掲載決定までの期間が非常に短いという点です。
私の場合は、論文を投稿してから16日後に論文の査読者(reviewer)からのコメントが返ってきました。
2日後に、コメントへの対応と訂正した論文を送ると、なんとその次の日に掲載決定通知が来たのでした。
投稿から19日で採択決定という早さであり、非常にスピーディーです。
学振DCへの申請者の場合、論文投稿はどうしても申請書提出ぎりぎりになりがちですので、掲載決定までが早い国内学会の雑誌は、申請者の強い味方です!
頑張って研究を進めよう!
最後は言うまでもないことなのですが、頑張って研究しましょう!
論文の文章は、実はあなたではなく指導教官が書いてくれることもあります。
(研究室によっては、学振の申請書まで書いてくれるところもあるらしいですね…苦笑)
しかし、あなたの論文に載せるデータを取るのは、あなたしかいません。
最低でも論文にできるだけのデータを集めるのは、あなたがやるしかないのです。
それに、頑張っているあなたが困っていたら、指導教員のみならず、研究室のメンバーは何らかの形で助けてくれますよね。
逆に言えば、頑張ってない人は誰にも助けてもらえません。
学振申請書の提出直前になって後悔しないよう、研究に励みましょう!
ただ、毎日夜遅くまでやるのも体に良くないので、「論文を書くことを意識して実験を計画し、進める」の項を参考に、効率的に研究を進めましょう!
論文がない(足りない)けど何とかする方法(申請まで2か月切っている方向け)
DC1の申請書提出まであと1か月しかないけど、まだ論文がない…
もうすぐDC2の締め切りだけど、まだ論文が1本しかない…
申請書の提出まで1か月以上ある場合は、国内学会が刊行している学術誌などに投稿すれば、まだぎりぎり間に合うかもしれません。
しかし、締め切りまで1か月を切っていたり、あるいは研究室内の都合で、よりインパクトファクターの高い学術誌に投稿せざるを得ない場合は、申請書提出までに論文採択が間に合う可能性は低いです。
こういう場合は、申請書提出までに論文を投稿し、業績欄に「論文投稿中である」ことを表記しましょう。下に例を示します。
Jan Suzuki, John Tanaka, Jane Sato, “(タイトル)”, ○○(学術誌の名前), 2019, 論文投稿中
この場合、申請書が良く書けていれば「面接候補者」に選ばれることができます。
学振DCの申請書提出は5月の終わり頃であり、面接が開かれるのは11月の下旬から12月の中旬です。
このため、5月下旬までに投稿した論文が採択されたかどうかは、面接の時点でほぼ間違いなく確定しています。
したがって、面接の時点で論文が採択されていれば、ほぼ間違いなく学振にも採用されます。
実際に、私の先輩はAngewandte Chemieに論文を投稿し、他に掲載された論文は無い状態でDC1の申請書を提出しました。
その結果、面接候補者に選ばれ、幸い面接時には論文が採択されていたため、DC1に採用されることができました。
もちろん、面接時までに論文が採択されていないと採用は厳しいのですが、業績欄に論文が一本もないまま提出するよりも、確実に採用される確率を上げられます!
今回のまとめ
今回は、学振DCに採用されるために最も重要なポイントを紹介しました。
それは、業績欄の、自分が筆頭著者となった論文の数です。
学振DCの申請書提出までに論文を出せるよう、日頃から計画的・効率的に研究を進めていくことが重要です。
ただし、いくら論文を出していても、申請書の内容がめちゃくちゃだと、当然不採用になる可能性はあります。
一方、論文を出していなくても学振DCに採用される人もいます。
これは、論文を出している申請者の数よりも、採用予定者数の方が多いからですね。
このため、論文がなくても、良い申請書を作ることで逆転を狙うことは十分可能です!
学振DCの申請書の書き方は、また別の記事で紹介する予定です。
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