私が博士課程進学を決めた理由

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研究生活

今年、理系の大学院で博士の学位を取得したJan(ジャン)です。

私が修士2年生の時、ほとんどの同級生が修士卒で民間企業などへの就職を決めた中、私は博士課程への進学を選びました

本記事では、博士進学を考えている修士・学士の方の参考になればと思い、私がなぜ修士卒で就職せず、博士課程進学を決心したかをご紹介しようと思います。

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修士の頃に考えていたこと

私が本格的に就職か進学かを意識し始めたのは、修士1年の秋でした。

そのころの私は、修士卒として就職したら「修士卒は一人の兵隊に過ぎず、本当に重要な仕事や、自分が一番やりがいを感じられる仕事はできない」と考えていました。

もちろんこれはただの思い込みで、修士卒でも大活躍している方はたくさんいるのですが、当時の私はそう思っていたのです。

一方で、修士卒から働き始めたほうが生涯賃金の期待値は間違いなく大きくなるだろうとも考えていました。

つまり、やりがいを取るなら(アカデミックに残るにしろ企業に就職するにしろ)博士号を取得した方が良く、お金を取るなら修士卒で就職したほうが良いだろうと思っていたのです。

そこで、修士卒としてお金が最も稼げる就職先はどこなのか探し始めました。

給料の高い職業

私は化学を専攻していましたが、化学メーカーに入ったところで年収はたかが知れています。

なので、「自分が就職できる可能性が十分ある範囲で」給料のなるべく高いところを探しました。

例えば外資系金融は非常に高給なのですが、とても入れるとは思わなかったので除外していました。

調べた結果、総合商社がベストだろうという結論に至りました。

化学品の輸入なども行っているため、理系文系ともに採用があります。

給料は非常によく、海外勤務となればさらに手当てがつくため、入社数年で年収1000万円もありえる、という話も見かけ、非常に魅力的に感じたのはよく覚えています。

そこで、某総合商社について書いた本をAmazonで買い、総合商社の仕事について学びました。

意識高い系ではないただの理系修士だった私にとって、総合商社の業務内容について触れるのは初めてのことで、その業務の幅広さと重要性を知り、ますます総合商社に興味を持つようになりました。

そこで、総合商社は実際どうなのか、より深く知るためOB訪問を行うことにしました。

学生支援室の卒業生名簿を閲覧したところ、私と同じ学科のOBはいませんでしたが、同系統の学科出身の方がいたので、連絡を取りお話を聞かせていただきました。

やりがいの重要性

私がOB訪問させていただいた総合商社の社員の方は、まさに東京のど真ん中にある、丸の内のオフィス街の一角で働いており、昼休みにランチを食べながらお話を伺いました(おごってもらいました)。

事前に準備していた質問を色々と聞いたのですが、最も意外だったのは仕事のやりがいについて話題が及んだ時でした。

その社員の方に、普段は具体的にどのような業務を行っているのか聞いたところ、パソコンの画面を見て数値に異常がないかチェックする単純な作業だと仰っていました。

しかし当時の私は、総合商社の仕事が何でも魅力的だと思っていたため、次のように尋ねたのです。

ジャン
ジャン

作業自体は単純でも、スケールの大きい仕事を支える重要な業務ですし、やりがいは感じるんじゃないですか?

しかし、その答えはやや意外なものでした。

いやまあ…そんなに面白いものではないよ

もちろん、OB訪問してきた学生に対して仕事がつまらないと話すわけにはいかないでしょうから、口にした言葉はこのくらいでした。

僕も気まずくなって、すぐに話題を変えてしまったと記憶しています。

しかし、その言葉以上に、社員の方の表情が「自分の仕事にやりがいを感じない」という不満、虚しさを物語っていました。

こうしてOB訪問を終え、心に残ったのは、「長く働く仕事を選ぶ際には、やりがいが非常に重要」ということです。

実は、私の父も「やりがいがないとやってられない」というような事を言っていました。

ですが、私は「給料への不満を、やりがいという言葉でごまかしている」という側面が多かれ少なかれあるのだろうと思い、その話を真剣に受け止めていませんでした。

しかし、総合商社の社員でさえ、やりがいのない仕事に不満を抱くという事実は、私にとってやりがいの重要性を最も強く印象付けるものでした。

総合商社は非常に給料が良く、さらに「総合商社の社員である」というだけで一種のステータスになるくらいすごいポジションです。

それゆえ狭き門であり、総合商社について深く研究し、強い熱意を持っている人でなければ、入社するのは不可能です(よほどのコネがない限り)。

すなわち、総合商社の社員というのは、「総合商社の仕事についてよく研究し、念願かなって入社した人であり、かつ、非常に恵まれた地位と給与を享受している人」のはずです。

そんな人ですら、やりがいがないというだけで不満を抱えてしまうのですから、いかにやりがいが重要なのかを思い知らされたのです

本当はもっと色々な人に話を聞くべきだったのですが、私はこの時点でOB訪問も就活もやめ、博士課程進学を決めました。

修士卒で就職すれば収入は最大化されるがやりがいは少ない、と私は考えていたため、 「給料よりもやりがいの方が重要である」という考えが固まった時点で、修士で就職するという選択肢はなくなったのです。

まとめ

本記事では、私の個人的な経験と、当時考えていたことをまとめました。

博士進学を選んだ最大の理由は、「自分にとって収入よりやりがいの方が重要」という考えがまとまったからでした。

一応フォローしておくと、総合商社の仕事にやりがいがないというわけでは決してありません

どんな仕事であってもやりがいを感じるかは人それぞれであり、総合商社でやりがいを感じつつ高収入を得て最高の生活を送っている方もたくさんいると思います。

また、給料をたくさんもらうことがやりがいやモチベーションにつながる人にとっては、収入=やりがいであり、この二つが必ず相反するわけではないです。

あくまで、個人的な経験として考えてもらえると幸いです。

また、やりがいという側面以外にも、私の研究室では博士課程に進学する先輩が比較的多くいたので、博士課程修了後の将来に対する不安がなかったというのも、博士進学を決めた理由の一つです。

進学を決めた時点では、卒業後にアカデミックに残るか、企業に就職するかはまだ決めていませんでした。

しかし、博士1年でのある出来事をきっかけに、私は企業に就職することを決心しました

この辺りの事情については、また別の記事に書く予定です

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