修士の皆さんの中には、順調に研究結果が得られ、指導教員からこのように言われた方もいるのではないでしょうか?
これまでの結果をまとめて、論文書いてみようか
修士の学生であれば、これまでに少なくとも10本以上は学術論文を読んでいますし、論文が大体以下のような構成になっていることも分かっているはずです。
- 要約(abstract)
- 導入(introduction, イントロ)
- 結果(results)
- 考察(discussion)
しかし、いざ書こうとすると、なかなか難しいと感じる人が多いのではないでしょうか。
(私もかつてはそうでした。)
「とりあえず書いてみたものの全然まとまらない・・・」
「そもそも、どこから書き始めればいいの?」
そこで本記事では、私Jan(ジャン)が実践している、論文作成に不慣れな学生でもスムーズに学術論文を書き始める方法を紹介します!
本文を書き始める前に下書きを作る
私は論文を作成し始める前に、まず紙を1枚用意し、以下のような手順で下書きを作成しています。
- 論文の結果(results)部分に載せる図のラフな下書きを、Figure 1から順に紙の左側に書く
- Figure 1に示した実験を行った理由を、Figure 1の下書きの右側上方に日本語で書く(例:〇〇を明らかにするため、××の実験を行った)。
- Figure 1に示した実験 により分かったことを、2の下に書く(例:その結果、△△が示唆された)。
- Figure 2以降についても、2, 3を行う。
- 図の順番は正しいか、複数の図を一つにまとめた方が良いか、論理展開は妥当か、などの点について考える。
以下、この方法のポイントを解説していきます。
結果(results)から書き始める
皆さんは要約(abstract)や導入(introduction)から書き始めていませんか?
実は、それが論文作成のハードルを上げているんです・・・。
修士の学生であれば、今の分野の研究を始めてから長くても2年ちょっとしか経っていません。
博士でも、修士と違う研究室を選んだのであればほぼ同じです。
このため、研究室のボスや他の研究者たちに比べ、 大学院生は研究の位置づけを考えるうえで必要な背景知識が不足しています。
したがって、要約(abstract)や導入(introduction)を書くためにたくさんの文献を調べなければならず、なかなか書き進めることができません。
要約(abstract)や導入(introduction)の部分から論文を書き始めようとすると、非常に大変なのでやる気がなくなってしまうかも・・・
一方で、実験やデータの解釈は毎日のように行っているので、自分の実験結果については比較的スムーズに書くことができます。
なので、まずは書きやすい結果(results)の部分から書いていきます。
実験結果は多くの場合図を用いて説明することになるので、まずどんな図を載せるか大体決めてから、文章を考えます。
といっても、論文を書く段階まで来ていれば、それまでに学会や研究室内での発表で、既に図は作っている場合がほとんどだと思います。
なので、どの順番で図を載せるか決め、それに対応した文章を横に書く、といった具合です。
なお、結果(results)を先に書くことで、これまでの研究で得られた成果を頭の中で順序立ててまとめることができます。
すると、これまでその分野で行われてきた研究の流れの中で、自分の研究をどう位置づければいいのかが自然とはっきりしてきます。
この状態で導入(introduction)を書けば、闇雲に論文を探す手間が省け、論文の他の部分も書きやすくなる、というメリットもあります。
結果(results)から書き始めると、論文全体を書く上でメリットがあります!
まずは日本語で考える
学術論文は英語で書くことになりますが、まずは日本語で論文の流れを考えましょう!
いくら英語が得意でも、人間の思考は母語に基づいて行われると言われています。
なので、論文のように複雑で論理的な文章を作成する際には、母語である日本語で思考を整理してから書き始める必要があります。
そもそも、論理的な破綻のない一貫した文章を作成するという作業は、母語で行うのもかなり難しいものです。
それをいきなり英語でやろうとすると、かなり高い確率でつまづいてしまいます。
特に学術論文を初めて書くという方は、この下書きができた時点で一度指導教員に見てもらった方がよいでしょう。
(めっちゃダメ出しされるかもしれません笑)
早い時点で論文を正しい方向に修正できたほうが、自分にとっても教員にとっても時間の節約となります。
日本語で書いてあった方が、指導教員にとっても分かりやすいですよね。
下書きを基に、ひとまず一気に書く!
下書きを作成し終わったら、いよいよ本文を書き始めます。
一見遠回りに思えるかもしれませんが、下書きで既に文章の流れが決まっているので、すらすら書くことができます。
最初に本文を書く際は、細かい文法などはひとまず気にせず、一気に書き進めることをお勧めします。
論文は文章の流れが命なのですが、文法が気になっていちいち立ち止まっていると、流れを見失ってしまって書きづらいです。
文法や語彙を見直すのは、一つの段落を書き終わった後にまとめてやりましょう。
「英語が苦手でなかなか進まない!」という人は、Google翻訳を使うのもよいでしょう。
たまに不自然な英語になりますが、自分では思いつかない語彙を出してくれることもあり、結構使えます。
細かい部分を直す
本文が一段落ほど書けたら、文法や語彙といった部分を見直しましょう。
この作業は、文章を書きながらやるよりも、一通り書いてからやった方が、圧倒的に精神的負担が小さくなります。
また、引用すべき文献がすぐに見つかるなら、この時点で引用文献を入れてしまってもよいかもしれません。
ただし、この時点での文章は第一稿であり、今後指導教官と相談しながら何度も書き直す場合がほとんどです。
ちなみに、私は現在二本の論文を書いているのですが、両方とも書き直しを重ね、片方は第14版、もう一方は第20版に達しています苦笑
この時点であまり細かい点までこだわってもあまり意味がないので、文法的な間違いがないことを確認したくらいで指導教官に見せるのが良いでしょう。
完璧な文章を仕上げた後に、一から書き直すよう教員から言われるとダメージでかいですからね・・・笑
今回のまとめ
論文執筆の初心者が科学論文を書く際には、以下のようにするとスムーズに書けると思います。
- まず紙に下書きを作成する。
- 結果(results)の部分から書き始め、紙の左側に図、右側に文章を日本語で書く。
- 下書きができたら、これを基に英語の文章を一気に書く。文法など細かい部分は後で直す。
今回は論文を書き始める方法として、結果(results)の部分の書き方をご紹介しました。
導入(introduction, イントロ)の書き方は、以下の記事で紹介しています。
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