学振DCの申請書を提出するのは修士2年、または博士課程の5月頃であり、学会発表できる程度の研究結果が貯まっている方も多いと思います。
ぜひしっかりと審査員にこれまでの研究成果をアピールして学振DC採用につなげたいものです。
しかし、学振の申請書にグラフなどの研究結果の図を載せる際には、論文や学会スライドなどとは違った点に気を付けなければなりません。
本記事では、学振の申請書に載せる研究結果の図を作る際に注意すべきポイントをご紹介します!
最重要:パッと見ただけで理解できるグラフや画像にする
研究結果を説明するための図は、グラフや画像となります。
そのため、学会発表用に作ったグラフなどが既にある方、またはすでに論文を出している方は、こう思うかもしれません。
前作った図を、サイズだけ変えてそのまま載せればいいか…
しかし、申請書の図は論文のようにじっくり読むものではなく、あくまで「パッと見てわかる」ことが求められます。
学会のように自分が口頭で説明するチャンスはありませんし、論文のキャプションのように長々と説明を加えるのも非現実的です(書いても読まれません)。
そこで以下では、審査員が一発で理解できる研究結果の図を作るためのテクニックをまとめます。
直感的に理解できる結果だけを載せる
論文発表にしろ論文にしろ、実験結果として複数の図を示すことになりますが、その中から最も分かりやすく、直感的に理解できる図を選びましょう。
例えば私の場合は、「微生物の代謝活性が時間とともに増加するグラフ」や「微生物の代謝活性分布が大幅に異なる2条件でのヒストグラムの比較」を載せています。
どちらも、パッと見た段階で「増えていってるな」「2条件で全然違うんだな」ということが一目でわかるため、これらの図を選択しています。
複雑な解釈が必要な図は、もしそれがあなたの研究の一番本質的な部分であったとしても載せるべきではないです。
重要だけど複雑な結果は、図にせず文章中に書きましょう。
また、図の中に含まれる情報をなるべく減らすことも重要です。
例えば、5種類のプロットが表示されているグラフを載せようとしているなら、考え直した方が良いです。
あなたの研究成果となるデータ1つとネガティブコントロール1つだけ残し、他の3つのプロットは削除してから載せましょう。
対応する研究結果の文章が書いてある場所に図を入れる
研究結果の図は、これまでの研究結果が書いてある「2. 現在までの研究状況」の欄の後半に入れましょう。
難しいのは、この欄の途中に改ページが入っていることです。
図が載っているページと、図に対応する説明の文章が書いてあるページが異なる場合、審査員にとってかなり読みづらくなってしまうと予想されます。
ぼかし付きで申し訳ないのですが、例として、私の申請書内容ファイルの1,2ページ(申請書全体の3,4ページ)を以下に示します。
私の場合は、これまでの研究の結果を2項目示し、それぞれの結果に対応する図を1,2ページ目に1つずつ入れています。
この申請書の場合、これまでの研究結果①に対応する文章が1,2ページ目にまたがって書かれているので、図に言及する文章はなるべく1ページ目に入れる方が望ましいです。
公開されている学振申請書を見て、他の方がどのように図を入れたかを確認するのもお勧めです(リンク先はなぜかページ冒頭に非常に大きいサイズの黒い写真が貼られていますが、下にスクロールすると申請書へのリンクがあります)。
説明は図の下(キャプション)ではなく図の中に書く
論文では、グラフに〇、△、□のプロットだけが書いてあって、図のキャプションに「〇はA、△はB、□はCを表している」みたいに書いてある論文がありますよね。これは最悪です。
グラフの説明は、必ず図の中に書き込みましょう。
(個人的には、論文でもそうすべきだと思っています)
したがって、キャプションは必然的に短くなっているはずです。
もし申請書の図のキャプションが論文並みに長かったら、キャプション中の説明を図の中に移せないか考えてみてください。
画像データも、審査員がすぐわかるよう思いやって作る
「思いやって作る」とは、何とも抽象的な言い方になってしまいました笑
画像データはグラフよりも直感的に理解できる場合が多いため、明るさなどを調整したらそのまま載せてしまいがちです。
また、論文などでは画像データを過度に加工するのはやめるよう出版社から要求されていることがほとんどです。
しかし、申請書と論文は全然違います!
老眼が進んで手元がぼやけて見える審査員に当たることも十分考えられるので、画像データの場合も「思いやり」を持って図にしましょう。
例えば、あなたがあまり目の良くない審査員だとして、以下の図a-cを見たらどう感じるでしょうか?
この図を載せる目的は、色が黒っぽい(ここでは、代謝活性が低い)細胞の存在を示すことです。
図aのように、画像をそのまま載せるだけでは、もしかすると白い細胞しか見えず、黒っぽい細胞は見落とされてしまうかもしれません。
図bのように矢印があると黒っぽい細胞の存在に気づきやすくはなりますが、それでも少し見づらいです。
やはり図cのように、矢印を付けたうえで目立たせたい対象を点線で囲んでおくのが最も見やすく、「思いやり」のある図だと言えるでしょう。
これはほんの一例ですが、直感的に理解できる画像データであっても、さらにわかりやすくできる点はないか考えるようにしましょう。
グラフの軸目盛(数字)は本文よりも少し小さく
学振DC申請書の図の作成全体に共通するポイントを紹介した記事で、「図中の文字の大きさは本文と同じくらいになるようにする」と書きました。
基本的にこれは正しいのですが、グラフを載せる場合は少し気を付けなければなりません。
グラフの軸目盛として表示する数字は、本文の文字より一回りか二回り小さくするとよいでしょう。
これは、数字が日本語(漢字)よりシンプルなので、小さくても読めるためです。
軸目盛を小さくすれば、グラフ本体のスペースを増やせるので、グラフがより見やすくなります!
一方、グラフのデータラベル(横軸と縦軸が表しているものの説明)や、グラフ中のプロットの説明は、日本語であれば本文の文字と同じサイズにしましょう。
ただし、データラベルやプロットの説明が英語(アルファベット)で書いてある場合は、やはり小さくても読めるので本文の文字より一回り小さくするとよいです。
今回のまとめ
本記事では、審査員に効果的にアピールするための研究結果の図を作るためのテクニックをご紹介しました。
まとめると、以下の通りです。
- 難しい解釈が必要な図は避け、直感的に理解できる図を選ぶ
- 図は、対応する文章が書いてある部分となるべく同じページに入れる
- 図の説明は、キャプションではなく図の中に書きこむ
- 画像データでもなるべく分かりやすく工夫して図にする
- グラフの軸目盛(数字)や英語は、本文の文字よりやや小さくする
これらのテクニックは、いずれも「パッと見ただけで理解できるグラフや画像を作る」という目的を達成するための手段なので、この点を忘れないようにしてください。
本記事では研究結果の図を作るときに気を付けるべき点を解説しましたが、申請書の図全体を作る際に気を付けるべき点は、以下の記事にまとめてあります。
また、研究結果の図と並んで重要となる、研究計画・内容の模式図の作り方は次の記事で紹介しているので、こちらも参照してみてください!
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