博士課程に進むなら、学振DCは誰もが取りたいと思っているのではないのでしょうか?
しかし、DC1, DC2の通過率はそれぞれ19.2, 19.8%(平成31年度)と、狭き門であることが分かります。
学振DCに採用されるにはどうすればよいのでしょうか?
別の記事で、学振DCに採用されるための一番のポイントは、査読付き論文を出していることだと述べました。
しかし、査読付き論文を出していなくても(または本数が少なくても)、学振DCに採用された方は実際多いです。
この場合、採用されたのは他の申請者よりも優れた申請書を書いたからにほかなりません。
後述しますが、学振DCの申請書を通すためには、一目で内容を把握できるような図を作成することが必須です。
そこで本記事では、DC1で不採用になったもののDC2では面接免除で採用された私Jan(ジャン)が、学振DC申請書の図を作成する際に意識すべきポイントを解説します!
最重要:本文を読まなくても申請書の内容が分かる図を作る
まず意識しなければならないのは、「申請書は読まれない」という点です。
学振の申請書を審査するのは、普段から授業・会議・研究で非常に忙しい大学の教授です。
ただでさえ忙しいのに、その合間に学振DCの申請書を何十本も審査しなければいけないわけです。
もちろん他の科研費申請書(PD、若手、萌芽、…)の審査もありますし、論文の査読依頼もしょっちゅう来ます。
このような状況で、学振DCの申請書をまじめに隅から隅まで読むのは、ほとんどの教授にとって現実的に不可能だと言ってもいいでしょう。
忙しい教授が短時間で申請書の内容をつかむためにどうするか?
とりあえず図だけをみて流れを把握するのです。
図を見て、「面白そうな研究だな」と思ってもらえれば、本文も(他の申請書よりは)よく読んでくれるかもしれません。
なので、図だけ見てもよく分からないような申請書であれば、審査に通過するのは厳しいと考えられます。
以上で述べたように、文章よりも図の方が重要なので、図のために十分スペースを取りましょう。
ぼかし付きで申し訳ないのですが、私がDC2に採用された時の申請書を以下に載せます。
文章と図のバランスの目安として見てもらえればと思います。
申請書のこれ以降のページでは、ごく小さな表を一つ入れたのみで、図は入れませんでした。
これらの図が、学振の合否を大きく左右しますので、気合を入れて作りましょう。
図の種類は、大きく分けて模式図と研究結果を表す図があり、それぞれ重要なポイントが少し違うのですが、それは別の記事で解説します。
本記事では、申請書の図の作り方全体に共通する部分を解説します。
申請書本文の項目それぞれに図を対応させる
申請書の本文では、これまでの研究の背景、問題点、目的、方法、結果と、これからの研究の背景、目的、内容、といったことを書くように指示されています。
これらをいくつかの項目に分け、それぞれに見出しを付けて文章を構成すると、審査員が流し読みするときにも非常に読みやすくなります。
なので、申請書の図はあなたが本文中で設けた項目に対応させる形で作ります。
こうしておくと、審査員が本文を読まずとも「項目の見出しだけ読む→図を見る」という流れを繰り返すだけで申請書全体が理解しやすくなります。
以下では、私の申請書を例に説明していきます。
まず、「2. 現在までの研究状況」を1.5ページにわたって書くことになるので、これまでの研究が一目でわかるようにまとめた模式図を入れましょう。
私は「これまでの研究の方法」に対応する図の中に、「研究の背景」や「問題点」に対応する内容も組み込んだので模式図は1つでしたが、これらの内容を別の図に分ける場合は模式図を2つ、3つ入れる場合もあり得ます。
次に、これまでの研究結果に対応する図を入れます。
私の場合は研究結果を2つ載せたので、それに対応する図も2つ載せています。
続いて、「3. これからの研究計画」の「(1)研究の背景」ですが、ここはスペースが狭いので図は載せないでおきます。
次の「(2)研究目的・内容」では、この研究内容の数だけ、それに対応する模式図を入れます。
私は研究内容を3つに分けたので、模式図も3つ載せてあります。
申請書本文をきちんと項目分けして作っておくと、読みやすいし図とも対応させやすいので、一石二鳥ですよ!
図中の文字は日本語で書く
審査するのは日本人なので、一目でわかる図を作るためには日本語を使う必要があります。
やはりアルファベットが並んでいるよりも、表意文字である漢字を使った方が、即座に意味が伝わります。
国際学会や論文のために作った英語の模式図やグラフは、めんどくさがらずに日本語に直しましょう。
ただし、英語の方が伝わりやすい場合は無理に日本語に直さなくてよいです。
例えば私の申請書では、グラフの横軸に「全窒素に占める同位体窒素比」と書いてもわかりづらいので、”15N/Ntotal“と表記しました。
図中の文字のフォント、サイズに気をつける
概略図に含まれる文字のフォントやサイズは、図の見やすさを左右する重要な要素の一つです。
まず、図に使用する文字のフォントはゴシック体にしましょう。
ゴシック体と対をなす明朝体は、申請書本文のような文章を書くのには適していますが、図の中で使うのには不適だと言われています。
日本語であれば、MS Pゴシックでも良いですし、私はHGSゴシックEを使っていました(MS Pゴシックより少し太くなります)。
英語ではCalibriかArialが良いと思います(この二つのフォントは同じサイズに設定しても実際の文字の大きさがかなり違うので注意)
文字のフォントに関しては、こちらの研究発表のデザインのページが参考になります。
また、概略図中の文字のサイズは、本文の文字と同じくらいになるようにしましょう。
私の場合、Powerpointで作成した図をWordに貼り付け、図中の文字の大きさが本文の文字と違う場合はPowerpointでフォントサイズを変えてからまた貼り付け…という作業を繰り返していました。
私のような大雑把な性格の人間には、このような作業は結構苦痛で、「研究内容と関係ないだろ!」と内心思っていましたが、それでもバランスが取れた見やすい図を作ることを心がけていました。
なぜなら、研究内容は審査員の理性(=意識)によって読み取られますが、図のきれいさ・見やすさは審査員の無意識に訴えかけるからです。
審査員はみな一流の研究者であるとはいえ、人間なので、バランスが取れていない図を見ると無意識に悪い印象を持ち、さらにはその申請書を読む気力がなくなったりするものです。
研究と無関係な部分で減点を受けないためにも、見やすい図を作るよう心がけましょう!
図の見やすさに対する感性の鋭さは人によってバラバラなので、自信がない人は発表スライドを作るのがうまい人に相談してみましょう!
図はカラーにしない
これ、意外と見落としがちなのではないでしょうか?
学振DCの申請書は、モノクロ印刷された状態で審査員に送付されます。
(何で提出は電子化したのに審査は電子化しないんでしょうね…笑)
なので、カラーで色分けした図を作っても、モノクロ印刷すると見分けがつかなくなってしまう恐れがあります。
さらに「図の赤線のように~」と本文で説明していた場合、図と対応が取れなくなってしまいます。
このため、図は最初からモノクロ(グレースケール)で作成しましょう。
人によっては、結構工夫する必要が生じてきます。
私はまさにそうで、学会発表などでは細胞ごとの代謝状態を色で可視化した画像を使っていたのですが、これと同じことをモノクロで表現するために頭をひねりました笑
今回のまとめ
今回は、審査員に研究内容を一発で伝えるための図を作るテクニックをご紹介しました。
まとめると、以下の通りです。
- 申請書本文の項目と図を対応させる。
- 図中の文字は基本的に日本語で書く(逆に分かりづらくなる場合は別)
- 図中の文字のフォントはゴシック体とし、本文の文字と同じ大きさにする。
- 図はモノクロで作成する。
これらの項目はすべて、「審査員が本文を読まなくても研究内容が理解できるようにする」という目的を達成するためのテクニックに過ぎません。
この目的を常に頭の片隅に置いておくことが、最も重要です。
また、申請書の図には、研究の流れを伝える「模式図」と、グラフなどの「研究結果の図」の2タイプがあります。
今回の記事ではその両方に共通する点を書きましたが、これらそれぞれにおいて注意すべき点は別の記事で書く予定です。
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